開業前よりずっと構想していたがん相談を開始します。
病院勤務医の時は、がんの告知と抗がん剤治療を専門にしていました。
がんの告知の時は、出来るだけ相手の表情や理解度をみながら説明していたつもりです。
抗がん剤治療の説明の時も十分な時間を取って、効果と副作用を丁寧に説明していたつもりです。
しかし、それは医師にとって全て説明していた「つもり」でした。
ほとんどの患者/家族さんからすると、1度の説明だけで「がん」なんて認めたくないし、いくら主治医が説明してもすんなりと受け入れられるハズもありません。
また全ての治療が終わると、「あとは緩和医療だけです」と言われ、ほとんど患者さんは治療していた大病院を離れることになります。
その時の患者/家族さんに頼りなるがんに慣れた相談相手は、今の和歌山の現状ではほぼ皆無です。
開業してから担当した患者/家族さんから、大病院の主治医/看護師の対応について様々な声を聞きました。
突然クリニックに、困っているので相談に乗ってほしいという電話も何度もありました。
こういった方々の相談に乗ることで、少しでもがん治療や残りの時間を有意義に過ごして頂けるように、お手伝いさせて頂きます。
在宅医療にあからさまに誘導するつもりはありません。
このがん相談で儲けるつもりもないので、費用も大病院のセカンドオピニオンよりかなり低く抑えました。
来院が困難な方はオンラインでも対応します。
ご希望の方は、どうぞご利用下さい。
詳しくはホームページの「がん相談」をご覧下さい。
2020-06-06 23:37:06
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仰々しいタイトルを付けましたが、最後まで読んで頂ければと思います。
私が担当する患者さんの多くは、最新の医学をもってしても治らない方や死が差し迫っている方です。
患者さんとそのご家族は、当然多くの悩み、不安、症状を抱えておられます。
答えのない問題も多いです。
そういった方々に対していかに有効なケアを提供するかは、非常に難しいテーマです。
多くの先人が様々な考えを言ったり書き残してくれていますが、先日読んだ先輩Drの本にはこう書いてありました。
①援助者に必要なことは、苦しむ人と一緒に苦しむことに耐える覚悟、苦しむ人の傍に居続けること
②援助者が全てを負おうとしないこと
①は、援助者自身も無力な者であるが、それでも逃げずに苦しむ人の傍にいて、支え合いながらともに歩むことが大事という意味です。
②は、真面目で優しい援助者ほど、自分がなんとかしてあげなければならないと考え悩むが、無力であるために援助者が苦しむ➡苦しむ人(患者さんやご家族)に対しても悪い結果になる。援助者の役割はあくまでも伴走者であること。
なんだか禅問答や聖書にでも出てきそうな言葉ですが、私は本当にその通りだと思います。
一緒に苦しみながら伴走することは、簡単なケースもあれば、めっちゃ難しいケースもあります。
以前担当したケースでは、患者さん本人から、「先生や看護師さんが来てくれても、全く楽にならない。とにかくどんな事をしてでも楽にして。」と訪問ごとに毎回厳しく言われたケースがありました。
帰りの車の中で、いつも私はなんとも言えない暗い気分になっていましたが、それでも訪看さんの協力もあり看取りまで担当させて頂きました。
最も苦しんでいたのはご本人とご家族ですが、我々伴走者も苦しみました。それでも逃げることだけはしませんでした。
在宅医療・・・奥が深いです。
だから面白くもあります。
最近、自虐的に自分のことを、「在宅バカ医の田伏です」と言ってます^^。

来年4月に開校予定の薬学部の巨大な校舎が建設中です。
薬学部は6年制なので、1期生が卒業して現場で活躍するまでにはまだかなりの時間が掛かりますが、あらゆる医療職の養成は重要です。
在宅医の養成も急務ですが、つい最近思わぬところから新たな在宅医希望者がいるという情報が・・・(続く?)。
2020-02-15 00:02:11
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年末ですね。
私は30日と3日を仕事日にして訪問予約を入れています。
またそれ以外の日も和歌山で待機の日々です。
今日は1年の振り返りをしていました。
今年もたくさんの方を担当させて頂き、お看取りも去年よりも増えています。
担当患者さんのリストを見直していると、様々な思い出がお一人お一人にあります。
上手くケア出来たケースもありますが、上手くいかなかったケースの方が気になります。
様々な要因がありますが、結局は自分の力不足の事が多いです。
まだまだ未熟なので、もっと在宅医として上達したいですね。
これはこの仕事を辞めるまで続くことでしょう。
こんな私にでも有難いことに仕事の依頼が絶えませんが、キャパが一杯で泣く泣くお断りすることもあります。
来春には志の高い在宅医の仲間が増えます。
少しでも多くの和歌山の方に質の高い在宅医療を利用して頂けるようになればいいですね。
普段気付きにくいですが、健康であることが当たり前ではありません。
だからこそ健康であることに感謝しつつ、自分の役割を果たしたいと思います。
皆さま、今年1年ありがとうございました。
2019-12-29 22:26:43
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小児在宅を担当しているKちゃんですが、1歳を迎えました。
体重はほとんど変わりませんが、毎日一生懸命生きています。
先日初めて危機的な状況がありましたが、訪問看護師さんとの迅速な連携で乗り越えることが出来ました。
Kちゃんには少し年上のお兄ちゃんがいます。
私の訪問時にはまずお兄ちゃんに、「Kちゃんの今日の調子はどうですか?」と聞くようにしています。
まだ小さい子供であっても彼なりにKちゃんを診てくれていますので、私と一緒にKちゃんの聴診もしてもらっています。
彼にも「兄の役割」を果たしてもらえるように常に配慮しています。

2月20日の会合には、予想を超える多くの方々に集まって頂きました。
和歌山市内の4人の在宅医が一堂に会し、わずか1時間だったので少しだけですが、それぞれの考え方/診療スタイルが披露できたのではないでしょうか?
また折を見て、企画したいと思います。
2019-02-23 03:09:47
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今年もわずか2週間ほどですね。
毎日、訪問診療の日々が続きます。
先日の研修医センターの講演では、将来在宅医に興味のある研修医と会うことが出来ました。
それだけで私の今回の目的は達成されました。
また来年度以降も継続したいと考えています。
先日、嬉しい連絡も頂きました。
独居の70代のがん患者さんで、娘さんのいる高知県で最期を迎えたいと希望されていたケースです。
高知への引っ越し準備が整うまでの在宅医療を希望でかかりつけの病院より紹介され、初回訪問時は引っ越しを了解してくれた娘さんへの感謝の気持ちを切々と述べられました。
しかし2日後に病状が急変して、元の病院へ再入院となりました。
その後の連絡がなかったのでどうなったか分からずに心配していましたが、無事に高知県の病院に転院されたと娘さんより電話を頂きました。
私はたった2回だけの訪問でしたが、今は娘さんと一緒に過ごしていると聞いて嬉しく思います。
Mさん、人生最後の希望が叶って良かったですね。
今日は私が7~8歳の頃に遊んでいた神社の近くの患者さん宅に訪問しました。
懐かしかったので約35年ぶりにお参りして来ましたが、登って遊んだ楠もそのまま残っていました。
何をお祈りしたかは内緒です。

2018-12-14 17:45:46
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少し長くなりますが先日のことです。
80代女性の一人暮らしの方で、1年くらい訪問診療を続けている患者さんのお話しです。
普段は2週間に1回訪問していて、性格は非常に頑固で自分が納得しないと周りの意見は聞かない人です。
平日の朝7時半に本人から電話がありました。
「昨夜からもの凄くお腹が痛い。夜中に電話しようとしたが朝まで我慢していた。痛みはだんだん強くなっているので、すぐに来てほしい。」
ちょっとの事では電話してこない方なので一大事と考え、車の中で腹痛の原因を考えながらすぐに往診しました。当然その日の午前中の予約の方はすべて時間変更です。
診察するとかなり重症の腹痛で、すぐに病院受診が必要な状態でした。
その旨を説明しましたが、ご本人は脂汗をかきながら病院には行きたくないからまずは痛み止めを打ってほしいと希望されました。
説得を試みましたが、性格は一旦言い出したら考えが変わらない方です。しかし義理にも熱い方です。
そこですぐの病院受診を諦め、希望通り痛み止めを打つが2時間後に私が再訪問することを交換条件として了承を得ました。
私は、再訪したら1日に2回も来たんだから病院へ行くと言うだろうと義理深い本人の性格を読んでいます。
「2時間」の根拠は、
- 緊急の治療を要する腹痛であり、2時間以上は待てないこと
- この腹痛には痛み止めがほとんど効かないこと
- 2時間後の再診後に救急搬送してもまだ正午すぎのため、病院は通常業務の時間帯で緊急手術等の対応がスムーズにして頂ける時間帯であること
そして再訪問すると、痛み止めはやはり効果なく腹痛で苦しんでいます。
「もう効く痛み止めはないから、救急車で病院に行ってきちんと調べてもらおう。私も一緒に救急車に乗って、病院の先生に引継ぎをするから安心してね。」
一人暮らし&強い腹痛があり自分で病院受診の準備ができないため、身の回りの物と保険証、薬一式をまとめました。そしてご本人がかかりつけの病院に救急で受け入れて頂けるように直接電話で交渉し、搬送の了解を得てから119番へ連絡。通常救急隊は現場に到着して搬送者の状態を確認してから病院に搬送依頼の交渉をしますので、病院の了解が得られるまで現場から発車出来ないのです。しかし先に在宅医が搬送病院を確保していると、すぐに搬送して下さるので時間のロスが全くありません。
これはご本人のためにも、多忙な救急隊員のためにも理に適っているため、私は常に心がけています。また救急車に同乗したのは今回で5回目です。
病院の救急外来で荷物を事務員に渡し、ER医師に申し送りをして病院を離れました。
数時間後に病院から連絡を頂き、非閉塞性腸管虚血症(NOMI)の診断ですぐに緊急手術となったと報告を受けました。
NOMIは皆さんには聞き慣れない病名だと思います。かなり稀な疾患で腸管の虚血により腸管が腐り(壊死)、手遅れになると広範囲の腹膜炎や多臓器不全を起こして致死性が90%と非常に怖い疾患ですので、この方もあと半日遅ければ亡くなっていたかもしれません。
手術では約20cm腸管が壊死していたそうですが、無事に回復して退院されました。
実はこの人、人生で2つのがんの治療を受けてその度に克服されています。
本当に運の強い人ですね。
以前のブログで、「命は救えないが~~~」と書きましたが、あれは末期がんの方のことです。
今回のように病院での治療の必要性/可能性があると判断したら、ご本人と相談し病院紹介もしていますので悪しからず。
私は決して「必殺看取り人」ではありませんからね。
在宅医として質の高い在宅医療を私なりに追求しています。
来月は先天性の難病でNICUにいる新生児の在宅医療を引き受ける予定です。
私にとって新生児の在宅医療は全く初めてで未知の領域ですが、ご家族や病院の小児科医、訪問看護師さんと協力して担当させて頂きます。
2018-08-24 17:10:51
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先日、60代のNさんを肺がんでお看取りまで担当させて頂きました。
お仕事は建築士をされており、自ら設計された素晴らしいご自宅で、最期までオレ流の生き方を貫かれました。
強烈なキャラクターのため、Nさんに関わる全ての人は大変な苦労をされましたが、我々に凄く気を遣う方でもありました。
私が担当した期間は僅か3か月ですが、在宅医として必要な多くの事をNさんから学ばせて頂きました。
そして本日、Nさんからお花が届きました。
きっと天国から私たちの事をニヤッと笑いながらご覧になっていることでしょう。
ありがとうございました、Nさん。
あなたが設計した自慢の橋、長野県まで必ず見に行きますね。

2018-05-08 15:16:23
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先日、若手医師のY先生が見学にお越しになりました。
Y先生と私は全く面識はなく、当クリニックのHPを見て見学を申し込みされました。
数年後に和歌山市内で在宅クリニック開業を目標とされています。
半日の見学でしたので3件の訪問診療に同行して頂き、クリニックに戻りました。
そしてY先生がお帰りになる時に、私が在宅で看取りまで担当させて頂いた30代の患者さんのご両親が
偶然クリニックへお見えになりました。
ご両親からは訪問診療のお礼だけでなく、在宅で過ごした思い出や我々在宅スタッフへの想い、
看取りまで穏やかに過ごせたことへの親としての気持ち、そして両親自身のこれからの生活について
お話し下さいました。
このやり取りを私は敢えてY先生に真横で聞いて頂きました。
息子さんを看取ったご両親の想いを聞くことは、Y先生にはこの日一番の勉強になったことでしょう。
貴重な場面に偶然遭遇する運の良さは、Y先生が在宅医療が向いていることの証明と私は思いたいです。
私と面識がない方でも大歓迎ですから、皆さんも是非見学にお越し下さい。
お待ちしています。
2018-04-17 18:50:04
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皆さん、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)ってご存知ですか?
近年、医療だけでなく介護や福祉の世界でも盛んに言われている言葉です。
定義は、「将来の医療及びケアについて、患者さんを主体に、そのご家族や近しい人、
医療・ケアチームが、繰り返し話し合いを行い、患者さんの意思決定を支援するプロセス」です。
ごく簡単に言うと、ご本人の今後について関係者全員で相談して決めましょうということです。
在宅でACPを行うのは結構大変です。
まず参加する関係者の日程調整を行い、事前にある程度相談内容を整理します。
問題点に対する解決法の探索とそれに対する本人/家族のそれぞれの希望も確認します。
関係者が多いと当然様々な意見/希望が出ますし、すぐには結論がまとまらないこともあります。
勤務医の頃は、病状と治療の事を説明すれば良かったですが、
在宅では、どういう生活をしていて本人/家族の希望を伺い、それを叶えるにはどうしたらいいか、
このまま在宅で過ごせるのか、入院が必要なのか、施設入所が必要なのかについて、
医師は医療、看護師は看護、ケアマネは介護の立場から意見を出し、社会的/経済的な面も考慮しながら、
1つの方向性を出そうとします。
そして上手くいかなければACPを繰り返し行います。
先日、90代の心不全の患者さんでACPをしました。
自宅で過ごせるように心不全症状に対して様々な策を講じましたが、症状がひどくなってしまいました。
それでもご本人は自宅生活に強い拘りがあったので、数日様子をみましたが、ついに白旗を上げました。
往診ですぐに伺い、ご本人が入院することに同意されたため、入院先の病院を手配した上で救急車を呼びました。
ご本人の奥様は室内歩行がゆっくりなら出来る方でしたが、救急車を見送る時はご自分で玄関先に出て
壁につかまって見えなくなるまで救急車を見送っておられました。
夫婦の絆を拝見して、ご本人が苦しくても自宅生活に拘った理由の1つだったと私は理解しました。
数日後に病院に見舞いに行くと、必死に治療されていましたが、私に笑顔で話して下さいました。
Y様、退院をお待ちしています。

左から、担当ケアマネ・長男さん・ご本人の奥様・次男さん・長男の奥様・ご本人・在宅医・担当訪看ナースです。
参考資料
http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20180307_31.pdf
2018-04-10 17:55:30
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