たぶせ在宅クリニック 和歌山市の訪問診療

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院長コラムhead doctor’s blog

日はまた昇る20.2.22

その他

約10年前、御坊の病院で勤務していた時、まだ医師になって5~6年目の頃のお話しです。

日高地域在住の40代の女性の方が大学病院血液内科から転院されてきました。

病名は「白血病の疑い」で、精密検査の結果が出るまでの間、地元の病院に転院して結果を待っていて欲しいという依頼だったと思います。

患者さんの状態はまだ重症ではなく、普通の生活をされていましたので、入院中といっても特に治療をしていたわけではありません。

しかし結果次第では「白血病」が確定するわけですから、ご本人は凄く落ち込んでおられました。

私もまだまだ未熟な医師だったので、ご本人にどう接したらよいか分からず、病室への回診も最低限しか行わず、しかも回診しても会話がほとんどありませんでした。

そして数日後に「白血病」という結果が出ました。

検査結果は大学病院の担当医から直接本人に伝えられ、翌日大学病院に戻ることになったと私に連絡がありました。

白血病ということは、大学病院で大変厳しい抗がん剤治療が待っています。

その結果、効果がなければ亡くなることも十分あり得ます。

その日の夕方、最後の回診に行きました。

西日の入る個室にたった独りでベッド上で泣いておられました。

しばらく声を掛けることが出来ず、でも退室することも出来ず、ただただ泣き止むのを待っていました。

どれくらい時間が経ったか覚えていませんが、少しずつ会話が出来るようになりました。

会話の終わりに、「先生だって(塞ぎ込んでいる)私のところに来にくいのに、毎日来てくれてありがとう。」と小さな声で言われました。

咄嗟に出た私の言葉が、「日はまた必ず昇ります。大学病院でしっかりと治療を受けて下さいね。」

その瞬間、西日の当たるご本人の表情がパッと明るくなりました。

その後、この患者さんが大学病院でどうなったかは分かりません。

しかし私にとっては、患者さんから教えてもらった貴重な経験として、深く心に刻んでいます。

お城の夜景

新型肺炎の影響や風評被害が和歌山のあちこちで出ています。

2月と3月の勉強会、研修会は全て中止/延期となっています。

気持ちまで暗くなりがちですが、平穏はまた必ず戻ってきます。

日々の感染対策をしつつ、その時を待ちましょう。