たぶせ在宅クリニック 和歌山市の訪問診療

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院長コラムhead doctor’s blog

ある患者さんのお言葉20.5.10

在宅医療

コロナの勢いは弱まってきそうな雰囲気ですが、巨大地震の余震と同じく第2波も予測されるので、まだまだ油断はできないと思います。

そんな中、昨年お看取りを担当したご家族様よりこの時期に大変有難いプレゼントを頂戴しました。

我々クリニックスタッフだけでなく、現在担当している患者さんやご家族さん達で必要な方にはお裾分けさせて頂き、有効に活用させて頂きます。

N様、お気遣い本当に有難うございました。

今回は先月お看取りを担当した患者さんのお話しです。

ある癌となり3年間大病院で抗ガン剤治療を外来通院で行い、途中何回も入院もしました。

病院の主治医先生のことも、「大変お世話になった」と感謝されていました。

抗がん剤治療が終了となり、余命1~2カ月の推定で在宅医療を開始しました。

実際に担当してみて、病状が悪化してきたので、私としても1か月くらいかなと考えていました。

しかしある時より悪化がピタッと止まりました。

ベッド上生活からは改善しませんでしたが、1か月が過ぎ、2カ月が過ぎても、病状は横ばいのままでした。

その間、たくさんの会話をご本人と交わしました。

ある時、ご本人が「在宅医療は先生と看護師さんを独占できる」とおっしゃいました。

その意味は、病院では先生とも看護師さんとも十分に会話は出来ないが、在宅医療ではゆっくりと関わってもらえるからということでした。

私は会話と診察を提供し、看護師さん達は必要なケアを十分に提供してくれていました。

私は毎回15分~30分、看護師さんは毎回1時間前後は滞在します。

その間は、病院スタッフのように院内携帯が鳴りまくる訳でもなく、じっくりと向き合います。

同居の娘さんは訪問開始当初は介護への不安で表情が険しかったですが、家族しての対応方法を丁寧に説明すると、その通りに実践してくれて、娘さんの表情はいつしか穏やかになりご本人も大満足でした。

亡くなる1か月前からは、脈絡ないことや被害妄想的な発言が出ましたが、これは(終末期)せん妄であることとその対応方法をお伝えすると、娘さんは慌てることなく上手に介護してくれました。

亡くなる数日前には、私に最後の感謝の言葉を述べられ、静かに旅立たれました。

担当期間は9カ月と、平均25日からすると異例の長さでした。

病状悪化が一旦停止したのは、何が良かったのかは分かりません。

「在宅医療は先生と看護師さんを独占できる」というお言葉は、私の説明文句の一つに採用させて頂きました。

Kさま、素敵な言葉を頂戴してありがとうございました。