院長コラムhead doctor’s blog
障害特性を持つ方の在宅医療③19.7.11
前回の続きです。
「私たちが自宅で最期まで面倒をみたい」
この方の両親と初めてお会いした時に、希望されたことはたった1つです。
出生時より30数年間、ずっと親子一緒に過ごしてこられました。
部屋には外出や旅行の写真がたくさんありました。
それぞれのエピソードを聞きながら両親の想いを伺っていると、お二人の覚悟は非常に強いものでした。
もしかしたら70歳前後のお二人には、今ならまだ体力的に全力で息子の看病が出来るという気持ちもあったのかもしれません。
そして、私の役割は非常に明確であることをすぐに理解しました。
訪問看護師さんも担当してくれた薬局さんも非常に協力して頂きました。
彼と両親のための在宅医療チームは上手く機能し、看取りまで何のトラブルもなく役割を果たすことが出来ました。
そして多くのことを学ばせてもらえました。
四十九日が過ぎた頃に自宅に弔問に行くと、両親はまだまだ深い悲しみをお持ちでしたが、それでも感謝の言葉を頂戴しました。
自宅の庭には四季折々の花が植えられています。
他の患者さんの訪問のために彼の自宅前を通ることがあるのですが、四季の花が咲いているのを見るとなんだか嬉しくなります。
ご両親は当然でしょうが、私の心の中にも彼はいつもいます。
学びの機会を与えてくれた彼と両親に感謝しながら、これからも日々の訪問診療を続けていきます。
日野原先生は多くのお言葉を遺されていますが、右の本の中に紹介されている1つを紹介します。
「いよいよ患者の死が近いというときに、私たちがしなくてはならないのは、医師としてこの人の命を伸ばすこと以上に何をすべきかを考えることです」
このお言葉に少しでも近づけるように、日々勉強です。
左の本は、今現在呼んでいる本です。
医師/看護師向けの本ですが、現在の日本の緩和ケアの潮流に警鐘を鳴らす一冊です。
読みごたえのある本なので、時間は掛かりますがしっかりと学びたいと思います。