たぶせ在宅クリニック 和歌山市の訪問診療

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院長コラムhead doctor’s blog

質の高い在宅医療がもたらす変化①25.9.27

在宅医療

少し前に担当した50代の末期がんの患者さん(Kさん)のお話しです。

2か月半の入院期間で、2度生死を彷徨いながらも治療のお陰でなんとか小康状態まで回復し、自宅で最期まで過ごしたいというKさんの強い希望で、私に依頼が入りました。

他県に住む2人の子供さんのうちのお一人が休職されてご本人の介護をされることとなり、またお身内の方が担当ケアマネとなりました。

小康状態まで回復したとはいえ、口からは水分すら通過できない状態で、24時間の点滴と胃管(鼻から胃へのチューブ)から栄養剤の注入をしています。

Kさんは非常にはっきりとした性格の方で、退院初日に「買い物のために外出したい」と希望され、後日ご家族さんと外出され、久しぶりの買い物を楽しまれました。

また「願いのくるま」をご案内すると、即答で「大阪に行きたい」と希望され、遠方に住むもう一人の子供さんと3人で家族の時間を楽しまれました。

しばらくしてから病状悪化して旅立たれましたが、その数日前に遠方の子供さんも急遽帰宅され無事に間に合いました。

後日、お身内でもあるケアマネさんとお会いした際、「今までケアマネとして多くの人を担当してきたが、今回初めて家族と遺族の気持ちを経験した。今後の仕事に活かします。2人の子供もそれぞれ感じる事があったようです。」と話されていました。

Kさんは死が近いことを覚悟の上で、毎日を必死に過ごされていました。
それぞれのご家族に新たな学びがある事は、Kさんにとっても意義のあることだと思います。
こういう感想を聞かせて頂けると、在宅医として最高の幸せです。

後日、Kさんを担当した訪問看護師、ケアマネ、訪問薬剤師、訪問入浴スタッフが集まり、打ち上げの会を行いました。
冒頭でKさんに対して献杯を行い、その後は振り返りをしながらお互いの意見交換をして盛り上がりました。
その中で新たな構想が持ち上がりました。
1~2年後に素晴らしいサービスが和歌山で実現できるかもしれません。
Kさん、心よりご冥福をお祈りいたします。