院長コラムhead doctor’s blog
いつまで「回す」のか26.2.21
春の兆しが少しずつ感じられる最近ですが、体調管理は難しいですね。
皆様、十分にお気を付けて下さい。
今回のテーマは透析の終末期です。
医療業界では、透析を行うことを「(透析を)回す」と言います。
透析の仕組みというのはある種の回路ですから、回すという表現が使われているだと思います。
日本の透析技術と管理方法は世界でも極めて優れていて、透析を受けていれば末期の腎不全でも命は続きます。
しかし腎不全以外の病気(がん、認知症etc)合併や老衰で透析の医療機関に通院するのが困難となったり、血圧が低すぎて必要十分な透析が回せない状況となった時、透析を辞めるという決断はなかなか出来るものではありません。
なぜなら透析を辞めれば、確実に数日から1週間程度でお迎えが来るからです。
またがんの末期であれば、緩和ケア病棟に入院することが出来ますが、透析を辞めても緩和ケア病棟には入院出来ません。つまり(専門的な)緩和ケアを受けることは病院では出来ません。
ごく簡単に書きましたが、透析をいつまで回すのかというのは、極めて難しい判断をご本人とご家族に強いることを意味しています。
昨年末、透析を辞めようと考えている人がいるので、辞めたら在宅医療で担当して欲しいという依頼が病院からありました。
80代のご本人は透析を辞めたいという気持ちが強かったですが、配偶者や子供さんは辞めたらすぐお別れというのもご存じですから、透析を辞めることには否定的でした。
入院中の病院の主治医だけでなく看護師さんなどとも繰り返し相談を重ねた結果、退院しても透析に通院出来る日は透析を回す、通院出来なくなったら自宅で最期まで過ごすという方針となりました。
退院後1回は透析を回せましたが、2回目の日の朝は血圧が低すぎて延期となりました。
ご家族の悩みはとても深いもので、部屋には重い空気が漂っていました。
私に出来る事、求められていることは、悩んでいるご家族の傍にいることです。
透析の継続についてはご家族内でも温度差があったので、私はお1人ずつ気持ちを伺うことに集中し、それぞれの家族の葛藤に配慮しつつ必要最小限の助言を行い、ご家族としての方向性がまとまることを待ちます。
そしてご家族としても透析を回さないという最終的な判断が決まりました。
その後は苦渋の選択をされたご家族をサポートしつつご本人へケアを継続し、多くのご家族に囲まれながら静かに旅立たれました。
後日、配偶者の方とお会いした際には、「悩んだけど、良いお別れとなりました。訪問看護師さんや先生が熱心だったので、悔いは全くありません」と笑顔で話されていました。
別日に透析専門の医師と話す機会がありましたが、透析の医師としても「いつまで回す」かは重要で難しい問題となっていて、悩みながら日々診療を行っていると伺いました。
今後も同様のケースの依頼はあるので、個々の状況に応じた在宅ホスピスケアの提供をさせて頂きます。
