たぶせ在宅クリニック

和歌山市の訪問診療 たぶせ在宅クリニック

〒640-8264 和歌山市湊桶屋町10 M&MビルA号室
TEL 073-424-0207  FAX 073-424-0300

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在宅医の葛藤

水害は本当に怖いですね。
2018年10月の台風では、和歌山市内でも停電や断水で困りました。
皆さんは災害への備えをされていますか?

さて、今回は在宅医の葛藤のお話しです。

在宅医療では、「医学的判断」<「本人/家族の強い希望」な場合が往々にしてあります。
例えば、終末期で両足やお腹に水が溜まっている場合、点滴はしない方が良いことが多いです。
何故点滴をしない方が良いかを説明すれば、ほとんどの方は納得されます。
しかし時に「点滴をして欲しい」の一点張りの方もいます。

医師の説明に反して強く希望されるにはそれぞれに理由があるので、必ず確認します。
その理由に私たちが納得できる場合はまだいいのですが、全く納得できない場合もあります。

ここでいつも悩みます。
①医師として患者に害になることは出来ないと断る
②説明を尽くしてもなお希望するのだから、本人/家族の言う通りすれば良い

①を選ぶと、患者/家族に寄り添っていないと批判されたり、病院へ入院したりします。
②を選ぶと、患者/家族は何も言いませんが、我々在宅スタッフは非常に複雑な心境です。何故なら患者に害になることを日々行うことは非常なストレスがあるからです。我々は一体何のために訪問しているのか分からなくなります。

以前のケースで②を選択し、本人がお亡くなりになってから家族さんに希望通りしてくれてありがとうと言われました。
家族さんから見れば我々は寄り添ったことになっていますが、私の気持ちは・・・。

私の考えが全て正しい訳でないのは、普段から忘れないようにしています。
家族が感謝しているのだからいいじゃないかという意見もあります。

こういうケースを担当するといつも思うのが、本人/家族に寄り添うのは簡単ではないということです。
きっと、苦しみ抜いた先に答えがあるような気がします。
まだまだ私に在宅医としての経験が足らないということなんだろうなと思っています。


2~6月に予定されていて延期になっていた講演が、次々と今秋に予定されています。
来年の新しい動きも徐々に進みつつあります。
関係する皆様、どうぞよろしくお願いします。

 

2020-07-12 23:50:29

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主語は誰?

在宅医療と病院医療の違いは多くあります。
そのうちの1つに、本人/家族さんの希望を出来るだけ優先するという原則があります。

例えば、在宅医が診察の結果ある薬が必要ですと説明しても、本人/家族が何らかの理由で飲みたくない場合は、その理由が在宅医として納得できるものであれば敢えて処方しないこともあります。
たとえ無理やり処方しても飲まずに自宅に溜まっていくだけですから、必要性を説明した上でも希望しない場合は処方しません。


在宅医療では家族以外にも多くの在宅スタッフが関わり、あらゆる人から様々な報告が入ります。
ただここに大きな落とし穴があります。

「痛がってます」
「食べていません」
「眠れていない」
「しんどそう」
「トイレに行けません」
「入院しなくていいの?」
「点滴を希望している」etc

ここで大事なのは、これらの主語は「誰」かということです。

主語が「ご本人」なのか、「同居の家族」なのか、「遠方の家族」なのか、「訪問看護師」なのか、「ケアマネジャー」なのか、「ヘルパー」なのか、「友人/ご近所さん」なのか・・・。

主語がどなたかを確認して、その訴え/報告の原因はどこにあるのかを考えます。
単なる説明不足の場合は、すぐに主語の人に対して説明を行います。
病状が変化しているなら、必要な対応を行います。

主語を確認せずに鵜呑みにして物事を進めると、上手くいかないことがあります。
そしてその代償はご本人が払うことになります。

在宅医が全てのことを把握することは不可能なので、私への報告や希望の連絡は大切にしています。
全ての連絡には細心の注意を払って対応することを、常に心掛けています。


次回は在宅医の葛藤について書きたいと思います。
 

2020-07-05 16:41:08

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人生で最後の出会い

私のクリニックに紹介されてくるのは、がんの末期の方が多いです。
そしてその方々とは、たった23日(中央値)でお別れします。
つまり患者さんにとって人生の最後の出会いが我々在宅医療のスタッフです。

悲喜こもごも様々な人生があります。
我々は自宅の内部や家族関係を否が応でも見ることになるので、様々な生き方を目の当たりにします。
「(今までの人生と同様)最後いい人と出会えた」と話す方がいます。
「(大変な人生だったけど)最後にはいい人に出会えた」と話す方もいます。
たまに「今まで医者に良い印象はなかったけど、最後にやっとマトモな医者に出会えた」と話す方もおられます。

いずれにしてもそれぞれの方の最後の出会いとなるので、「いい人に出会た」と思って頂けるように心して日々訪問するようにしています。


「24時間独りで看取りをされるのは大変ですね」とよく言われます。
確かに決して楽ではありませんが、それを遥かに上回るやりがいがあります。
その1つが、様々な人生と出会えることです。
(良くも悪くも)一生縁がないような世界/趣味を垣間見ることもあります。
そしてそのことは、私の人生観を豊かにしてくれます。


以前もこのブログに載せた私の講演でよく使うスライドを再掲します。

 

2020-06-27 23:42:53

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がん相談を開始します

開業前よりずっと構想していたがん相談を開始します。

病院勤務医の時は、がんの告知と抗がん剤治療を専門にしていました。
がんの告知の時は、出来るだけ相手の表情や理解度をみながら説明していたつもりです。
抗がん剤治療の説明の時も十分な時間を取って、効果と副作用を丁寧に説明していたつもりです。

しかし、それは医師にとって全て説明していた「つもり」でした。
ほとんどの患者/家族さんからすると、1度の説明だけで「がん」なんて認めたくないし、いくら主治医が説明してもすんなりと受け入れられるハズもありません。
また全ての治療が終わると、「あとは緩和医療だけです」と言われ、ほとんど患者さんは治療していた大病院を離れることになります。
その時の患者/家族さんに頼りなるがんに慣れた相談相手は、今の和歌山の現状ではほぼ皆無です。

開業してから担当した患者/家族さんから、大病院の主治医/看護師の対応について様々な声を聞きました。
突然クリニックに、困っているので相談に乗ってほしいという電話も何度もありました。


こういった方々の相談に乗ることで、少しでもがん治療や残りの時間を有意義に過ごして頂けるように、お手伝いさせて頂きます。
在宅医療にあからさまに誘導するつもりはありません。
このがん相談で儲けるつもりもないので、費用も大病院のセカンドオピニオンよりかなり低く抑えました。
来院が困難な方はオンラインでも対応します。

ご希望の方は、どうぞご利用下さい。
詳しくはホームページの「がん相談」をご覧下さい。

 

2020-06-06 23:37:06

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丸3年が過ぎました

あっという間に3年が過ぎました。
本当に時間の経過は早いです。

この3年間、梅田より遠い場所に行ったのは、1度日帰りで東京に行っただけです。
梅田ですら3年間で6~7回くらいだと思います。
全ては自分の理想とする質の高い在宅医療を実現するための選択と集中です。


今までは本業の訪問診療以外に、在宅医療に関するあらゆる領域でのお手伝いも行ってきましたし、今後も継続していきます。
しかしこれからは、私が和歌山の在宅医療の問題点の本丸と捉えている「医師」の問題にも積極的に活動したいと思います。


信じられない人もいると思いますが、医師の業界では在宅医療は認知度/理解度はかなり低いです。
在宅医療に批判的な医師の多くが、「適当に聴診器をあてて薬を出すだけでしょ。そんなものを医療として認めない」という意見です。
以前、某大学病院の名誉教授から、私を名指しで「君のしている在宅医療や看取りなんて私は絶対に認めない」と公共の場で言われたこともあります。

この発言は極端としても、在宅医療に否定的な考えを持っている医師は数多くいます。
全く在宅医療を知らない医師も多くいます。
このような医師が主治医の患者さんは、たとえ本人が希望しても在宅医療に紹介されてくることはほとんどありません。

また在宅医療の中心を担う訪問看護師さんやケアマネさんにも厳しい態度で接するので、医師に対してアレルギーや恐怖心を抱く方も多いです。


この現状を変えていかなければ、和歌山の在宅医療の発展はあり得ません。
「10年で半人前・20年で一人前の入り口」と言われる医師の業界では、3年の実績だけでは見向きもされません。
しかしあと7~17年も待っていられないので、今から出来ることを1つずつ行動します。

この3年間、その下地を着実に作ってきました。
これから10数年間が私の在宅医としての第2段階で、この3年間以上の困難があることでしょう。
10年活動しても変化がなければ、私に能力/人望/運がないということなので、きっぱりと諦めます。
無事に第3段階(最終章)を迎えられるかは分かりませんが、自分に課した役割を果たしたいと思います。

 

2020-06-05 18:44:33

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3年間の診療データ

今年も6月1日が過ぎ、開業して丸3年が経ちました。
3年間の診療データを公開します。
亡くなった人の数を誇るための公開では決してありません。
(この当クリニックの診療データ公開は来年の分を最後にする予定です)


公開の目的は、

①密室医療となりがちな在宅医療ですが、当クリニックの実際を知っていただくため
②このデータを元に、今の和歌山の在宅医療の問題点を探りたい
③今後、和歌山で在宅医を目指している医師に参考の1つとして利用して欲しい

1つ1つのデータに、当クリニックの訪問診療の特長や、現在の在宅医療の重要な問題点が隠れています。
興味のある方はしっかりと眺めてみて下さい。







以下はがん患者さんの在宅看取りを行った115人のデータです。

・在宅看取り率 78%
・在宅での診療期間(中央値) 23日
 











2020-06-05 16:27:32

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非常事態宣

和歌山県の非常事態宣言は解除されて、街に人も車も徐々に戻り始めましたね。
お店でもマスクが普通に売っています。
第2波がどうか来ませんように祈ります。
日頃の感染予防はまだまだ重要です。

コロナウイルスの研究が進んでいます。
昨日、厚労省から診療の手引きが更新されました。
病院スタッフだけでなく、在宅医療に関わる医師、看護師も一度はお読み下さいね。

●新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第2版

https://www.mhlw.go.jp/content/000631552.pdf

和歌山市でもPCRセンターが開設されました。
利用する機会がないのが一番ですが・・・。

●和歌山市PCR検査センターの設置について
http://www.city.wakayama.wakayama.jp/_res/projects/default_project/_page_/001/029/539/20200515_pr02.pdf



非常事態宣言の間も在宅医療は休みなしで、期間中は6人のお看取りをさせて頂きました。
詳しくは書けませんが、今の自分の全力を出しましたが力量不足を感じたケースもありました。
難しいケースを担当すると、自分の課題も教えて頂けます。
全国には素晴らしい在宅医が多くおられますから、もっともっと上達しないといけません。






緊急事態宣言中のある日です。
非常に澄んだ綺麗な空でした。
早く安心して外出が出来ますように!

 

2020-05-20 22:03:00

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ある患者さんのお言葉

コロナの勢いは弱まってきそうな雰囲気ですが、巨大地震の余震と同じく第2波も予測されるので、まだまだ油断はできないと思います。
そんな中、昨年お看取りを担当したご家族様よりこの時期に大変有難いプレゼントを頂戴しました。
我々クリニックスタッフだけでなく、現在担当している患者さんやご家族さん達で必要な方にはお裾分けさせて頂き、有効に活用させて頂きます。
N様、お気遣い本当に有難うございました。


今回は先月お看取りを担当した患者さんのお話しです。
ある癌となり3年間大病院で抗ガン剤治療を外来通院で行い、途中何回も入院もしました。
病院の主治医先生のことも、「大変お世話になった」と感謝されていました。

抗がん剤治療が終了となり、余命1~2カ月の推定で在宅医療を開始しました。
実際に担当してみて、病状が悪化してきたので、私としても1か月くらいかなと考えていました。
しかしある時より悪化がピタッと止まりました。
ベッド上生活からは改善しませんでしたが、1か月が過ぎ、2カ月が過ぎても、病状は横ばいのままでした。
その間、たくさんの会話をご本人と交わしました。

ある時、ご本人が「在宅医療は先生と看護師さんを独占できる」とおっしゃいました。
その意味は、病院では先生とも看護師さんとも十分に会話は出来ないが、在宅医療ではゆっくりと関わってもらえるからということでした。
私は会話と診察を提供し、看護師さん達は必要なケアを十分に提供してくれていました。
私は毎回15分~30分、看護師さんは毎回1時間前後は滞在します。
その間は、病院スタッフのように院内携帯が鳴りまくる訳でもなく、じっくりと向き合います。

同居の娘さんは訪問開始当初は介護への不安で表情が険しかったですが、家族しての対応方法を丁寧に説明すると、その通りに実践してくれて、娘さんの表情はいつしか穏やかになりご本人も大満足でした。

亡くなる1か月前からは、脈絡ないことや被害妄想的な発言が出ましたが、これは(終末期)せん妄であることとその対応方法をお伝えすると、娘さんは慌てることなく上手に介護してくれました。
亡くなる数日前には、私に最後の感謝の言葉を述べられ、静かに旅立たれました。

担当期間は9カ月と、平均25日からすると異例の長さでした。
病状悪化が一旦停止したのは、何が良かったのかは分かりません。

「在宅医療は先生と看護師さんを独占できる」というお言葉は、私の説明文句の一つに採用させて頂きました。
Kさま、素敵な言葉を頂戴してありがとうございました。

 

2020-05-10 22:23:53

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コロナの影響

コロナに関する話題を3つ挙げます。

今日、友人が経営している飲食店を一時的に営業休止をせざる得ないと連絡がありました。
コロナの影響で当然お客さんは減っているのですが、経営体力はまだあります。
しかし県外客が増えていることや風評被害の予防の観点から苦渋の選択とのこと。
コロナ影響に対する具体的な対策を一緒に考えていただけに残念ですが、お店と従業員を守ることも経営者として大事です。


今月開業したホームケアクリニック城北の杜とは別に、さらにもう1件の新規開業を予定している先生のサポートも開始しましたが、やはりコロナの影響で当面は開業を延期して、まずは準備と研修に専念する方針になりました。


入院中の患者さんの家族の面会/付き添いがかなり厳しい状況です。
病院の置かれている状況と役割を考えれば当然の対応ではありますが、お別れが近い患者さんと家族にとっても切実な問題です。
面会出来ないくらいなら自宅に帰るというケースを、先月から何人か担当しています。
その中には元々は在宅医療の選択はなかったケースや面会制限を巡り病院側と揉めたケースもあります。
全てはコロナが原因なので、コロナがなければ私には依頼されなかったケースです。
いつもとは違う対応が求められますが、これも私の役割と考えお引き受けしています。


危機の時こそ、普段以上に力量が試されます。
自己の体調管理と私が感染拡大の原因とならないような対策を怠らず、毎日訪問しています。



昨日、Mさんをお看取りをさせて頂きました。
娘さんが非常に熱心な方で、ネットで私のクリニックを探して直接依頼を受けました。
娘さんは毎日自分の自宅から通いながらMさんの妻と共に献身的な介護をされ、シンプルケアに徹することでご本人と家族の唯一の希望である穏やかに人生の最期の時間を自宅で過ごしました。
昨日も朝食を食べられ、旅立つ直前まで会話も可能で、昼間に往診した際は私としっかり握手もして退室しました。
死を美化する意図は決してありませんが、見事な旅立ちでした。

Mさん、ご冥福をお祈り致します。
担当してくれた訪看さんとケアマネさんもありがとうございました。

 

2020-04-28 01:03:09

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追悼 Fさま

先日、Fさんを自宅でお看取りさせて頂きました。

がんの末期状態で、病院を退院した初回訪問の時点で厳しい病状でした。
しかし強い意志をお持ちの方で、何事もご自分でお決めになりました。

私は知らなかったのですが、Fさんはある領域でこの道50年のレジェンドと周りから慕われている方でした。
その慕われ方が半端なく、老若男女問わずあらゆる世代から支持されていました。

どんどん病状は悪化していきましたが、どうしてももう1度Fさんの大事な場所を見せてあげたいと思いました。
家族さんとも十分に相談した上で、その大事な場所へ外出することになりました。

普通なら外出などとても無理な状態で、出発の直前に最終的に行くと決めました。
パジャマから愛用の外出着に着替えて、私と訪看さん同伴のもと家族総出でどうにか現場に着きました。
そこにはFさんを尊敬する多くの仲間が待っていました。
(責任者の方に聞くと、コロナ肺炎の関係で参加者をかなり絞ったそうです)

年配の方から子供まで、様々な方がFさんに声を掛けていました。
その光景を見て、私はFさんの生き様を目の当たりにしました。


無事に自宅に戻った時は、疲れていたハズなのに表情はむしろ出発時より良かったくらいです。
そして翌日、静かに旅立たれました。


Fさんへ
私が知らない世界を垣間見せて頂きありがとうございました。
あなたの素晴らしい人徳もよく分かりました。
私がそちらに行ったら、是非乗れるようにご指導下さいませ。
よろしくお願いしますね。


2020-04-13 22:26:05

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