院長コラムhead doctor’s blog
主語は誰?20.7.5
在宅医療と病院医療の違いは多くあります。
そのうちの1つに、本人/家族さんの希望を出来るだけ優先するという原則があります。
例えば、在宅医が診察の結果ある薬が必要ですと説明しても、本人/家族が何らかの理由で飲みたくない場合は、その理由が在宅医として納得できるものであれば敢えて処方しないこともあります。
たとえ無理やり処方しても飲まずに自宅に溜まっていくだけですから、必要性を説明した上でも希望しない場合は処方しません。
在宅医療では家族以外にも多くの在宅スタッフが関わり、あらゆる人から様々な報告が入ります。
ただここに大きな落とし穴があります。
「痛がってます」
「食べていません」
「眠れていない」
「しんどそう」
「トイレに行けません」
「入院しなくていいの?」
「点滴を希望している」etc
ここで大事なのは、これらの主語は「誰」かということです。
主語が「ご本人」なのか、「同居の家族」なのか、「遠方の家族」なのか、「訪問看護師」なのか、「ケアマネジャー」なのか、「ヘルパー」なのか、「友人/ご近所さん」なのか・・・。
主語がどなたかを確認して、その訴え/報告の原因はどこにあるのかを考えます。
単なる説明不足の場合は、すぐに主語の人に対して説明を行います。
病状が変化しているなら、必要な対応を行います。
主語を確認せずに鵜呑みにして物事を進めると、上手くいかないことがあります。
そしてその代償はご本人が払うことになります。
在宅医が全てのことを把握することは不可能なので、私への報告や希望の連絡は大切にしています。
全ての連絡には細心の注意を払って対応することを、常に心掛けています。
次回は在宅医の葛藤について書きたいと思います。