院長コラムhead doctor’s blog
熱烈な歓迎26.7.18
毎日が災害級の暑さですね。
かなり薄い服装で訪問していますが、それでもこの暑さは堪えます。
今回のコラムは80代女性のお話しです。
癌の末期で強い痛みを抱えたまま自宅退院したいと、入院中の病院から依頼を受けました。
退院前のカンファレンスでは、ストレッチャーに寝たままのご本人と初対面でしたが、痛みのせいでお顔は苦痛に歪んでいました。
挨拶もそこそこに、ご本人に「痛みはなんとかしますから、明日退院しましょうね」と声掛けすると、ご本人は泣きながら握手をしてくれました。
元々独り暮らしをされていて、遠方に住む息子さんは退院に合わせて和歌山に来てくれましたが、ずっと和歌山にいれるかどうかは分からないということで、退院後は一旦施設に入所することになりました。
痛がっているご本人を見て当然息子さんの緊張と不安も強く、私は「初日から全力で臨まないといけないケース」と腹を括りました。
入院中に医療用麻薬(貼り薬)は開始されていましたが、効果は限定的でした。
出来るだけ早く痛みを減らさないといけないのですが、貼り薬の増量では十分な除痛までかなり日数が掛かるので、貼り薬はそのままで医療用麻薬の24時間持続注射を併用することで、数日後には普通に会話が出来る程度までには痛みを軽減出来ました。
それからは雑談する余裕も出て体調も落ち着きを取り戻したのでご本人は自宅に戻りたいと希望され、息子さんもご本人の調子や私達在宅スタッフの提供するケアに安心されたこともあり、施設から自宅に帰宅されました。
ご本人は元々食堂を長く切り盛りされていて、朗らかでおしゃべり好きな方です。
自宅に訪問した私の顔を見るなり、表情が乙女になり声は2オクターブ上がり、私の手を握りながらハイテンションでトークが始まります。その様子を横で見ている息子さんはニコニコされています。
安心を提供しているのは私ですが、毎回熱烈に歓迎してもらっていると、日頃のストレスをリセットさせて頂き私が癒される日も数多くありました。
その後も病状が悪化しても医療用麻薬は増量する必要がなく、訪問看護師さんや訪問入浴さんの心のこもった丁寧なケアを受けながら最期まで自宅で過ごされました。
後日弔問に訪れた際に最期まで熱心にお世話をされた息子さんからは、高卒以来40年以上振りに母親との大切な時間を共にすることで様々な学びがあったという感想を伺いました。
私としても大事な役割を果たすことができ、今回も全てのスタッフに感謝です。

息子さんの許可を得て掲載しています